oldboy-elegy (47)スワッ!!、この家の自由猫クロ、命にかかわる重大事。これを救ったのが母だった
★1
はじめに
この記事、おっかなビックリで立ち上げたブログ四か月目のものである。
つい先日、なにげに目にとまり、覗いて見ると、今日までの2年数か月の
間のお客さん、なんとなんと、二人の方がそれぞれ4個ずつ計8個のスター
を置いてくださったのが全てであった。
これでは、母と黒猫の(クロ)に申し訳がたたず、簡単な,リライトの上、
新記事として再掲さしていただいたのが今日の主旨である。
★★2
母と黒猫、クロとの出会いの場は家のカマド脇だった
上掲のイラスト画像は、見ての通り「かまど」である。
ただしoldboy-elegy君のいるこの家では「おくどさん」とか「おくどはん」
と呼んでいた。
床は土で、部屋は結構広く、土間(土でできた床)で台所として使用されて
いた。
外から玄関に飛び込むと、すぐ右脇の部屋がここにあたる。
うちの(母)の自由猫、クロは この「かまど」の右端の奥で「ミヤオ~」
と泣くところを、母に発見されたのが、そもそもの,なれそめである。
出会いからこうでは、当然、飼い猫とも言えず、母も俺も「自由猫」なる
称号を与え、勝手きままに我が家を出入りしていなさった。
彼(クロ)の久々の帰還のおりなど、母は、先ほどまでのヤキモキ感は
どこえやら、それこそ「猫なで声」でお出迎え、足を雑巾で嬉々として、
お拭きになっている。
今日の夕食は我が家で、母と妹の間の特等席が待っているはず。
どこぞに、本妻のいる本宅でもあるのか、母としては気にかかるところだ。
★★★3
「クロ」の一大事と餅つき大会と,かき餅つくり
母がクロと、土間のカマド脇で出会ってから1年待たずしてあのチョットした
事件がおきたのである。
チョットなどと母に聞こえたならきっとお怒りなさるだろう。
それ故、亡き母に敬意を表し「あの大事件」と訂正することにする。
その大事件は正月明けの1月の中頃のことと記憶している。
何故、そんな事、憶えているのかって?
それはクロの倒れた廊下の天井に干された色とりどりのカキ餅がズラリ
とぶら下がっていたのを鮮やかに思いだす、ためである。
このカキモチ干しが毎年のこの時期に行われるチョットした行事であった。
かき餅にはゴマ、黒豆、エビ、大豆塩豆、あおのり等、色々の風味(フレー
バー・Flavor)のものがある。
年末の吉日晴天の日に近所、向こう三軒両隣が集まり、餅つき大会が行われ
ていた。
晴天の日と限定しているのは、どこの家も屋根のある下で餅をつくほどの
広さも高さもないので、公道を利用しての作業となる。
もちろん、前掲イラストの「かまど」も、この日は大車輪(だいしゃりん)の
活躍だ。
★★★★4
そんな満艦飾の廊下のかき餅の下を歩くクロの足取りがおかしい。
足より先に前に体が出る、右に左にユラーリ、ユラーリの酩酊歩行。
そのまま板張りの冷たい廊下までヤットコ歩きドターとその場に倒れこむ。
これを見た母、すぐに彼の異変に気付く。
父がこしらえたタドンか豆炭かのやぐらコタツからお出まししたばかりである。
「あんた!!」もちろんoldboy君のことで、「桶に水張って、手ぬぐいある
だけすぐ持って来て」と言うなり自分もすぐに立ち上がり、ドドドと下駄も
履かずに土間のカマド脇に常備している大うちわを取って返す。
母、とってかえすなり、冷たい板張りに寝かしたまま、大うちわで「パタパタパタ」
今度は両手で「バタバタバタ」とあおぎ始める。
そこにoldboy-elegy君、母に頼まれた水の張った洗面桶と手ぬぐい数枚を持
ってくる。
「あんたあおぐの交代や」と言い、大うちわを俺に渡す。
クロ、いつもの精悍な目ではない。
手桶の水で手ぬぐいを軽く絞り、鼻を残して顔、首、腹・足裏・
手裏?までも。
肌が見える場所は全て冷水にてシップ。
「完全に中毒やな、クロ」と心配げな母。
「一酸化炭素中毒やわ、大丈夫かいな」とoldboy-elegy君、クロと母をみる。
「誰もコタツ入っていないし、豆炭に少し灰かぶしたんが悪かったのかな?」
と母。
つまり、豆炭に灰をかぶせると燃焼が遅くなり、そのぶん火持ちが良くなるの
道理である。
しかし良い事ばかりではない、不完全燃焼のため一酸化炭素ガス発生の危険度
も増すのである。
母はこの事を言っているのである。
暫らく続けていると、心なしか呼吸も落ち着いてきたように思う。
「なんかチョット落ち着いてきたみたいやな」とoldboy-elegy君。
クロ、さっきより呼吸が軽くなったようだ。
シロウト目にも、悪い方に向かっているとは思えない。
「もうちょっと続けて、ここ寒いから、座布団に寝かしたろ」と母。
「もう回復基調みたいやな、目の色が違ってきたわ」
「あんたタバコ盆持って来て、もう大丈夫やろ、一服するわ」と母。
「しかし、よう自力で、こたつから出てきたもんやな、でなかったら私ら
見過ごして、今頃・・・」さらに涙目の母.。
いやいや、今で言う「救急救命士」並みの母の活躍にはoldboy-elegy君、
大いに感嘆し、同時に驚かされたものである。
母子が、親子のみで島根県の松江にいたころ、病院の下働きをしていたことが
あった、この時の経験も幾分、役にたったのかもしれない。
その時、廊下の天井にぶら下がったカキ餅の欠片(かけら)が廊下に落ち、
結構、大きな音がした。
同時にクロも驚き、首をもたげ、音のした方を見る。
★★★★★5
やがて クロは いなくなった
それからのち、クロは自由猫としてこのウチに幾年か出入りしていたが
やがて、なぜか目にしなくなった。
母は寂しそうである。
およそこんな、結末を知っていたかのように。
夜おそく、アルバイトでの帰り道、近所の原っぱ脇の石置き場から、人の声の
ような猛々しい猫の唸り声が聞こえてきた。
「猫の集団による、テリトリー争い??」
あの中に「クロ」はいるのだろうか?
oldboy君、「多分いないだろう」と確信のような思いが脳裏をかすめる。
だって、いれば、必ず家で待つ母のもとに来るはずだもの。
これも、oldboy-elegy君 母との青春の思い出でもある。
了
oldboy-elegy