oldboy-elegy のブログ

ずいぶん長きにわたりグータラな人生を送ってきたもんです。これからもきっとこうでしょう、ハイ。

oldboy-elegy (55) ソウル暮色  4話 ①下級官吏?の横暴 ②闇両替商 ③この部屋を予約する理由 ④視線の先の狂乱あみだくじ

 

      まえがき

今日のこの記事、実はリライトによるものである。

ブログを初めてオヨソ半年ごろの記事。
スターを数えても10個程度、もちろんブックマークはゼロと言う惨状
であった。
そんな中、既読の方に申し訳ないが、全くの「新記事」として、今日、出稿
さしていただく。

内容的には変わりはないが、助詞の「てにをは」や、「段落・句切り」
それと「字数」を極力、減らすのに傾注させていただいた。

ここでは「ソウル暮色」としてoldboy-elegy 君が体験した四つのエピソード
を取り上げている。


★1   第一話 官憲の横暴と露店商人

f:id:oldboy-elegy:20220216194940p:plain

下級官吏?が路端で小商いをする老婆の野菜を入れたザルを足蹴にし、
路上にぶちまけた。


夜のとばりが降りたばかりの明洞(ミョンドン)は雑踏の中にある。
この地域は今も昔もソウル、いや韓国で一番の繁華な街だ。

一日を終え、仕事先の社用車でホテル近くまで送ってもらった。
あとは、歩くのが一番である。


 oldboy君、雨でも降らない限り、新世界百貨店(戦前の三越)前
あたりで車を降り、街の喧騒と雰囲気を楽しみながら、ホテルに帰る
のが常であった。

そんな折、あまり見たくもないこんな光景に遭遇したことがある。

白い、いわゆる韓服(チマ・チョゴリ)姿の老婆がデパート前の歩道
の街灯の下で大きな竹ザル2個に青物の野菜を一杯にして小商いをして
いるのに出会った。


oldboy君、この光景を目の端に入れながら通り過ぎようとしたその時で
ある。

制帽である野球帽、ブルーのシャツの両肩に肩章が厳(いか)めしく
乗った屈強な警察官?らしき二人が、あろうことかいきなり老婆の
売り物の野菜が入った大きなざる2個を足蹴にし歩道にぶちまけたので
ある。

oldboy君、一瞬凍り付き、その場に立ちすくむばかりで、何が起こった
のか理解できずにいた。


おばあさん、なにやら大声で叫び、二人の男達に、つかみかかり、食って
かかっている。

日本でもしこんな光景を見たら、おばあさんの身の上が、なにか哀れで、
理不尽な男達に「罵声の一つ」でも浴びせたくなるのが普通の人情であり
感情だろうが、ここはソウルである。

不思議なのが、繁華街を行き交う人々の多くが、全てとは言わないが、
この出来事に比較的無関心なのである。

oldboy君、歩みを止め、この衝撃的な光景に「あんぐり」、だが通行人
にとっては、
「氷ついたかの様に突っ立って、眼前を凝視する」俺の姿の
方が、なにか不自然な存在として見られているように感じた。

それだけ通行人の多くは無関心な様子なのだ。

法を犯した婆さんが悪い、の雰囲気だけが辺りを包んでいるのである。
oldboy君、そのあと、現場からそそくさと離れ、デパート前から横断
歩道を渡り、明洞側からこれを見るとはなしに見ている、まだ気になって
いたのである。

老婆は散乱した野菜をひろい集め、ザル一個を頭に乗せ、もう一個は小脇に
抱え去って行った。

ホテルに帰り、遅くに「帰宅」して来た井野さんにインスタントコーヒー
をいただきながら聞いてみた。

「明洞一帯の露天商の所場代、権利のまた貸し代が高騰してるらしい、
おそらく地域が雇っている、警ら隊の奴らと違うかな?」そいつら。
と井野さん。
「それにしても・・あまりに理不尽な」の苦い思いが胸にのこった。

この日、ベッドの中でも、この老婆の残影が消えないoldboy君がいた。


★★2   第二話 闇の両替商の本業はなに?

宿泊中のホテルを背にして門前の一方通行を右に数丁行けば、「新世界
デパート」に、左にすこし歩けば、ここにも「デパート」がある。
名前は「美渡波」だったか「美登波」だったのかは忘れた。


「新世界デパート」は韓国一の、業容を誇る老舗店(戦前は三越・ソウル店)
であるが、この「美渡波デパート」は似ても似つかぬ「しょぼくれデパート」
である。

いわゆるビル全体が「小店舗テナント貸し」でその業態は、昔、大阪にあった
「千日デパート」のようなものである。

実はこの得たいの知れぬ「デパート」も、あの「井野さん」の紹介で、
訪韓の折、必ず1・2回行くのがoldboy君である。


重々しい両開きのスイングドアーを押し開き、一歩入ると、「高麗人参
を扱う小売店がフロアー全部を占めている。


f:id:oldboy-elegy:20220217160200p:plain



もちろん「高麗人参朝鮮人参」を購入するために教えてもらった訳
でもない。

そう「闇の両替」はこれら「高麗人参店」の裏の顔でもある。

井野さん曰く「まあ5万円も両替したら2万ウオンぐらいトクになるんかな、
朴ママ」と女性店主に目配せ、納得させる。

「もし人参のみやげ買うなら、ここで買ったらいいわ、これほど粗悪品
掴まされる品物あらへんからな」と井野さん。

朴ママ、ニコニコ顔で「よろしくね、まかいしといて」となまりの無い
日本語でoldboy君にご挨拶。


いらい両替は、よもやま話を含めてこの高麗人参店でやっている。
そのおり、濃いコーヒーが出てくる。
高麗人参は以来、頼まれ物で何回か日本に持ち帰っている。
ただし母は一度口にしたが、顔をしかめ、後のご要望はなかった。

のちに知った事だが、これらお店の多くは、夜の女性も斡旋しているとの

こと。
なにが本業なのか、訝(いぶか)る、oldboy-elegyがそこにいた。



★★★3 第三話 oldboy君ソウル滞在中、いつもこの部屋を予約する理由

f:id:oldboy-elegy:20220217164032p:plain

 

oldboy君、この日も仕事を終えホテルにご帰還。

カウンターでキーを受け取り、自分の部屋に。

日程が決まれば直ぐに、日本から予約を入れるのだが、それでも時折満室で、
1日だけだが、別のホテルに宿泊することがある。
そんな時の手配は全て定宿にしているこのホテルがやってくれる。

基本的な日用品や、はては電気スタンドまで段ボール1箱にまとめてホテル
カウンター裏の小部屋の一隅に預けて帰国する。

何故か、ホテルの照明、oldboy君にとってはルクス不足に感じてしまうの
だが、
彼だけの感覚なのか、わからない。

予約する部屋は決まっている、4階エレベーターホールを出て右に、長い
廊下の突き当りを鍵型にさらに右に、そして一番奥の右側の部屋がお気に
入りなのである。

それには、oldboy君なりにキチンとした理由が存在するのである。

まず、ベッドの広さがダブルである事、普段、布団で寝ている身にとり、
この贅沢は何にも代えがたい感覚なのである。

次に、突き当りの部屋であるので廊下を行き来する人が、向かいの部屋の
宿泊客以外はいないのが嬉しい。


最後に、この部屋が気に入っているもっと重要な事がoldboy君にはある、
さてそれが何かお分かりかな。

「ホテル火災の恐ろしさ」に関係がある。

f:id:oldboy-elegy:20220220214241p:plain




1971年の師走、クリスマスの朝に出火、200人近くの人々が亡くなった。
「大然閣ホテル火災」が起きている、そんなに昔の事ではない、火災現場
もここ明洞(ミョンドン)からそう離れてはいない。


「大然閣ホテル火災」の死者の多さの原因は、22階という、高層造りで、
火の回りが異常に早く人々は火炎に追われ、飛び降りた事とされている。


一方oldboy君の投宿しているホテルの4階の廊下の突き当りには、鉄枠、
両開きのガラス窓が、設えられていた。

鍵もなく開けるのに、何の造作も要らない。

それにつけても火災に関する備えは全くない、外付けの非常階段は勿論、避難
用縄梯子(はしご)は無論、一筋のロープさえ無いのである。

ホテルの名誉のために言っておくが、21世紀の現在の話ではない、40年
以上昔の状況をお話しているのである。


だがこの窓のすぐ下は、アスファルトの地上ではなく、お隣の有名中華
料理店の大屋根なのである。

通常時、この大屋根に飛び降りろと言われれば、運動音痴の彼にはちと
しんどいが、いざとなれば、「やれん事はない」程度の高さなのである。

そう、この事が「この部屋が気に入っている」一番の理由でもある。

「お前、小心者すぎるやろ」と言う人もおられるかも知れないが、何も手間暇
(てまひま)かかるものでも無し、「自分の意識の奥にインプットしておくだけ
のこと」で安心感が違う、「夜は高イビキ」で眠れるということだ。

 
★★★★4  第四話  4階廊下に10人ばかりの男女、わいわいキャーキャー
      と辺りかまわぬ嬌声の中

暮れなずむ夕日の中、oldboy君、やや早めにホテルにご帰還である。
今日、井野さんのお誘いで、「新村・シンチョン」ロータリーの「兄弟
カルビー店」での食事会にご招待。

繊維会社の会長さんである「張・チャン」さんと言う方の招待である。
ビジネスの用向きでなく、「久しぶりに会って、楽しくお話しましょう」、
が主旨とのこと。

当然、oldboy君の同席は了解済みのことである。

井野さん曰く「この張会長はきれもので、出身は北朝鮮の平城(ピョンヤン
近郊の村、特筆されるのは戦前の日本が設立した「平城師範学校卒」との事。


のちにoldboy君、何が気に入られたのか不明だが、ビジネスとは関係なく、
幾度か食事のお誘いを受けている。


早朝、ホテルの部屋の呼び鈴がなり「誰だろう?こんなに早くに」と出て
みると、そこに出勤途中の張さんが立っておられ、「昨日会社でハイキング
に行き、これを買いました」とリンゴ4~5コの入った竹ザルを土産に手渡
されたこともあった。

もう一つ下げておいでになるので、今から上階の井野さんも訪ねられるの
だろう。

oldboy君、張さんに就いては、いずれ一つの記事として書くつもりである。

 

f:id:oldboy-elegy:20191027204232p:plain



さて、井野さんとの約束時間まで少しある、ルームキーを受け取り、自室に
手荷物を置きに戻るため、エレベーターで4階に、扉が開くとベルボーイの黄
(ファン)君が仲間のもう一人のクロークとホールの横に置かれている簡易机
の横に立ち、二人して同時にoldboy君みる。


ファン君、困り顔で俺を見て、廊下の奥を目配せし、oldboy君に懇願の様子。
廊下突き当りの角部屋の前で10人ちょいの男女が「ワーワー、キャーキャー」
と大騒動、アルコールも入っているらしい。


その嬌声の中から、日本語が聞こえてくる、男は全て日本人であるらしい。
ファン君「別にいいんですが、もう少し静かに、部屋の中でと、頼んでい
ただけません」と遠慮がちにoldboy君にお願いする、顔には「日本人同士
のよしみで」と、無言のプレッシャー。


僕ちゃん(oldboy君)、急に気弱になる。
不得意な事、数々あれど、根っからの「不戦論者」である彼の一番の不得意
種目である。

君子でもないが「危うきに近寄らず」は彼の主たるモットーの第一
番目をなすものである。


嬌声の中から「アミダで決めよ、それが一番公平やろ」の大声が耳に
はいる。

今晩のお相手を、アミダくじで決めようとの事であるらしい。


どうもこの場(部屋の外)でアミダクジをやるらしい。

ファン君、oldboy君の後ろに回り、押し出そうとする素振りである。

対面(といめん)の迷惑団体が、一層声を張り上げ、掛け声をかけ始めた
のである。

やがて、くじが始まる

 oldboy君、この一層の喧騒と「ホイホイ・・・」の掛け声に押されるかの
様に意を決したのである。

まさか死ぬこともないだろう、それにこれからもこの慣れ親しんだホテルの
スタッフに、あの人、「あかんたれ」」と影で後ろ指を指されるのはもっと
苦痛である、との思いがさせたのかも知れない。


決心すると、逆に義憤が生まれ、即、彼等の方にスタスタと歩みだす。
この行動、自分でも信じられないoldboy君である。

「あんたたち、この廊下は君たちだけのものではないんよ、やめろとは
言わないが、せめて部屋の中で遊んだらどうだ、あそこにいるベルボーイ
達の表情、見て見ろ、あの視線」的なことを、oldbou君、言ったようだ。


すると、男達の中の一人が,顔を斜にしながら、oldboy君にツッカカリ両襟
首を持たれることになったが、何故か怖くはなかった。

これが「肝が座った」状態と言うのだろう。


この時である、この集団の内の年配格の男が「こらxxやめとけ」と襟首
をつかんだ若者をしかりながら「みんなわしの部屋に入れ」と仲間を語気
荒く恫喝したのである。


この日、この後(あと)、張社長さんの待つ「新村カルビー店」へ急ぐ
ことに。


翌日の夜、ルームサービスでコーヒー&ハチミツシロップつきのパンケーキ
が届く、勿論、ただである。

ファン君(ベルボーイ)の精一杯のoldboy君へのお礼の意味である。


                            了
                               oldboy-elegy
           

oldboy-elegy.hateblo.jp