oldboy-elegy のブログ

ずいぶん長きにわたりグータラな人生を送ってきたもんです。これからもきっとこうでしょう、ハイ。

oldboy-elegy (34) 新手(あらて)のおもらいさん(乞食)現る、何故か無言のまま、反射的に「どうぞ」とジェスチュア―してしまう?!

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 もう30年?ほど昔の「お話」
である。
「ヒヤーッ、古っ!!」と
あきれる読者もおられるだろう
ことは、重々承知の上での投稿
である。
これぐらい昔話でも、oldboy君には、
つい昨日のような感覚に陥って
しまうのが情けない。





上掲のイラスト画像は、見ての通りの「地下鉄」である。

乗車駅は(地下鉄天王寺)だったように思うが、これも、いくらかあや
ふやである。

oldboy-elegy君、帰社途中のことだった。
目指す下車駅は、会社のある最寄り駅(堺筋本町)である。
現在の料金では230円となっているが、当時は幾らしたのだろうか。

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地下鉄天王寺駅のメインの切符売り場ではなかったようである。
券売機も3、4台程度しかなかった上に、なにやら薄暗く、くたびれ感、漂う
場所であった。

oldboy君、500円玉を取り出し、券売機に投入。

この時初めて気がついたのだが、白髪交じりの初老のお人が、彼の右脇に
ピッタリと立っていなさるのである、それも殆んど体が触れあわんばかりの
近さで。

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oldboy君「ウウン、なんだこの人!??」の気持ちがあったのは事実だが
それ以上のことはこの時はまだ念頭になかった。

ことはこの後、すぐに起こったのだ。

切符を取り、つり銭のあるトレーに手を入れると、なんとそこには、その
初老のお人の手が先に侵入していたのである。

oldboy-elegy君の指も、瞬間彼に触れたようであるが、つり銭はキッチリ、
彼の手でガードされている。

そう、彼、「新手・あらて」のおもらいさん(乞食さん)であったのだ。

見た感じ、そう言う種類のお人とは見えない。
白髪交じりの頭髪に乱れは感じない。
ただサンダル履きなのが、気にかかる。

この時、反射的に手を引いたoldboy君である。
「つり銭を取られてしまう!!」など全く考えもしなかった。
ただ「肌が触れ合った」気味悪さ故の反応だったと思う。

しかしこの方、2~3百円のつり銭を急ぎ、取り込み、すぐ先に見える
階段を登れば事は済むはずだが、それもしないのである。

ただただトレーの口を押えていなさるのである。

ここで彼と目があった。
いぜん、手はつり銭トレーの中である。

彼の目は
多少の申し訳なさとともに、「くれるのか、くれないのか、ハッキリしろ」
と言っている、「狡猾」さも見てとれる。

ただ、強奪をする訳でもなく「お前の了解を待っている、早くしろ」と、
無言で言っているのである。

ここで拒否しても、悪態をつくではなく、ましてや力まかせに強奪をする
感じでもない。

しかし、oldboy君の手と、態度は、「お金をあげる」ことに同意していた。
なぜ、そうなったのか自分でもわからない。
そしてトレーにつり銭を置いたまま、そこから少し離れる。

ここでも、この新手(あらて)のおもらいさん、表情に日がさすでもなし、
ましてや、喜びの表情が面(おもて)に現れることは無かった。

ただ当然のように、つり銭を手にし、急ぐ様子もなく、すぐ先の階段を上って
行く、悠々と。


すべてが、おもらいさんの予定知の中での、結論だったのかも知れぬ。
多分千円札でのつり銭は狙わないように思う。

(当時、千円札での切符購入が可能かどうかは記憶にない)

なぜなら、成功の確率が一気に下がり、いわゆる「危ない橋を渡る」掛
になってしまう、はずである。

結論
〇一人行動の乗客のみをターゲットにしているはず。
〇女性は狙わない(表情・雰囲気からは読めない怖さがある)
 今日のように、手が触れ合えば、大声で叫ばれることは「必至」である。
〇身なりの良い、いわゆる、出来そうな奴は危険(oldboy君あたりが
 ねらい目)
〇千円札でのつり銭客はねらわない

まあこんなところが、あやつの基本戦術で、最後は彼の第六感・感覚がものを
言う、

そう考えると、遅ればせながら、少々、oldboy君、腹が立ってきた。
なぜなら、自分が彼の御眼鏡(おめがね)にかなった人物・風貌であり、
事実その通りになったのだから。

ずっとずっと幼少のミギリ、月2回の大きな縁日が近所で開かれていた。
その折、お寺の石段の脇に「おもらいさん」が必ずおられたのを憶えている。

白のさらしの着物を着て頭にはカーキ色(濃い緑色)のヨレヨレの軍帽を
被り、まんまる縁の濃いブルーの色眼鏡をしておられた。
肩からは、アコーデオンが重々しくぶら下がっている。

いわゆる、傷痍軍人(ショウイグンジン)さんの「オモライ」さんである。
時には、松葉杖を石段の脇に置き、本人は杖に寄り掛かるようにして、足
を投げ出し、座っていた人もおられた。

oldboy君、この姿を見てギョットしたことがある。
片足が太もものあたりから先が無いのである。

アコーデオン曲の定番は、今日も暮れゆく「異国の丘」である。
子供心に何か、切なさを感じたものである。

終戦後10年少しのころであった。
今でも、彼らは正真正銘の「傷痍軍人」さんであったと信じている。

これに比べて、今日の「おもらいさん」、対極の存在である。
おまけに不遜すら感じる。

この間(かん)、始まりから、つり銭を手にした彼が去るまで、数十秒以内の事であったろうと思う

恐らく、券売機の前に立つ前から、この阿保ずら、それに裕福でも無い癖
に少額のお金ならルーズそうな奴、と見抜いての行動であったはず。

相変わらずoldboy-elegy君、ネクタイのノット(結ぶ目)は今日も下がり
気味である。

この仕事、もし人を間違えれば、大変なことになる。
少々小突かれるならまだしも、運が悪ければ、窃盗か何かで警察に突き
出されても文句は言えないものである。

ただ彼の最後の防波堤は
「強奪、強要は一切していない、いただけるかどうかの返事を待っていた」と、
もしもの時は答えるつもりだったのかもしれない。

oldboy-elegy君、時間が経つほどに腹が立ってきた。

あの、今日も暮れゆく「異国の丘」の「傷痍軍人」さんの時の「切なさ・
哀れさ」は、微塵も感じなかった。


           今日は、ここまで
              それでは   おやすみなさい   では では


              了
           oldboy-elegy