oldboy-elegy のブログ

ずいぶん長きにわたりグータラな人生を送ってきたもんです。これからもきっとこうでしょう、ハイ。

oldboy-elegy(11) 大学4回、最終学年の夏休み、就職未決のまま旅に出る。途中そこそこの距離を無料でタクシーに乗せていただいた、50年の時空を超えて今お礼を言いたい。


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 以前、ブログで「学生生活最後の夏休み、就職未決ながら貧乏旅行を優先」の事を少し書いた。
今日、「結構な距離をタクシーに無料で乗せていただいた」時の事を記事にしてみる。
そして50年の時空を超えて運転手さんに「ありがとう」とお礼を言いたい。
ご存命かどうかは問題ではない。
そしてこの旅行を通じて言える結論がある「人は全て優しかった」これである。
おれも願わくはそんな人間でありたい。
この運転手さんのイラスト画像である。本当はもっと年配の50歳前後の方だった。

 
今回は能登半島、新潟、佐渡島尾瀬ヶ原尾瀬沼)、日光、東京、ただし東京・大阪間は友人のいる2か所で下車、全行程2週間強の貧乏旅行であった。
半分近くは野宿である。
野宿、聞こえが悪いが、この方式すこぶるストレスフリーな快適な方法である、特に夏場には。まず交通機関の時刻を気にしなくてもよい事、ただ現実にそこに汽車、電車、バス、道が存在する事だけを確認すればあとはなんとかなる。
もう一つ、近くに警察なり交番があれば一声、声をかけておくのがベスト。
oldboy-elegyくんの場合この方法で夜遅く、現地の旅館の布団部屋に超超格安、にて紹介して頂き、おまけに坂の上の現地まで案内していただいた。
お巡りさん、自転車押し押し大変、有難うございました、上越線・沼田での事でした。

 この翌日、尾瀬沼、富士見小屋にてoldboy-elegyくんの大チョンボ発覚、あまりに美しい景色に写真をと、親父から借りたオリンパスペン(カメラ)を取り出す???!!!
「ない、ナイ」ショルダーバックは勿論、リュックサックの中身をすべてひっくりかえすが、オリンパスペンが行方知れず。
この時oldboy-elegyくんの弱いオツム(頭)にローソクが点灯、「アッツ!!!」思い出したのである。
佐渡両津港から佐渡汽船で新潟港行に乗船、その時、船内には入らず甲板デッキにへたり込み、眼前の欄干に吊るしたのがカメラだった。
甲板を吹き抜ける心地よい風に身をまかせウツラウツラ状態であったことは間違いない。
しかし??なぜ下船のおり吊るしたカメラが目に入らなかったのか、それも不思議。
尾瀬ヶ原の2つの小屋から昼夜佐渡汽船に連絡するが発見できず。
しかしoldboy-elegyくん、持ち前の復元力でキッパリ忘れる事に成功。

 ここからがタイトルの「そこそこの距離を無料でタクシーに乗せていただいた」に入る。
能登をぶらぶら中のことである。

 
いま高台にいる。
両手を真横一杯に広げると全面の180度はすべて日本海である。
夏の落日の陽光は西にある。
東の空は白に薄紫の刷毛で履いたような雲が浮かんでいる。
明日もきっと良い旅び日和になるだろう。

 
場所は奥能登曽々木海岸、先ほど降りて来た坂の上には「時国家」とか言う豪族の屋敷が2軒ある
なにげにそのうちの近い方の一軒を外から見学してバス停に到着したばかりのoldboyくんである。
荷物は固い綿の帆布でできたこげ茶色の大きめのリュックサックを背負い、肩には母手作りの紺色のショルダーバッグを斜めにかけている。
リュックは大阪鶴橋の国際マーケットで中古品として購入、ショルダーは普段から通学で使用していているものである。
リュックの中身と言えば下着、着替え、洗面用具など生活用品一式に渦巻き式の除虫菊製の蚊取り線香そのほか寝袋、こうもり傘、うちわ等はリュックの外に取り付けている。
ショルダーにはノート、筆記用具、タオル、チョットした菓子類ビスコなど、それに財布に学生証などと親父から借りたカメラ、オリンパスペンとフィルムなどである。
因みに今日までの三日で写真は2枚のみ。

 バス停の後ろの草むらにリュックを下ろし、へたりこみバスを待っている。
もう最終の時刻を幾分か過ぎている。
遠望が利く地道の道路、バスが来るはずの西の方向を見るがその気配なし。

 少しはやきもきもしたが、すぐに決心、今日はこの辺りで野宿、それもいいか。
この旅初の野宿である。
なんだかそう決心するとoldboyくんワクワク気分である。
海岸を見れば貧弱ではあるが松などの木々が見てとれる。

 低めの枝ぶりの良い木、松などが理想、を見つけ、こうもり傘を括り付け、広げ、その下にグリーン色の寝袋を敷き、蚊取り線香を燻らせば完璧。
あとは波の音を聞きながら満天の星があれば言うことなし。
oldboy-elegyくん一人悦に入っているのである。

 そこへ彼の背の方に車が一台停車、タクシーである。
「学生さん?ここ、いくら待ってもバスは来ないよ」のご宣託。
「???」と不信顔の彼に、最近この道は利用されなくなり、すべてもう一段下の海岸に近い道路を利用するとのこと、彼、運転手さん、まったくの気まぐれでここを通ったとの事。
東行きも西行も最終便は少し前に終了しているらしい。
「??!」すると俺が降りたバス停は、ここより下の、新バス停と言うこと、気が付かなかった。
それならせめて、ここの旧停留所の標識ぐらい撤去しておくのが普通であろうと思ったのだが、こちら別段そのためにことさら被害にあったわけでもないし、無言。
「明日どこへ行くの、東それとも西」と運転手さん。
「ええ、能登半島の東端の先っぽの狼煙(のろし)にでも行こうかなと思っています、天候が良ければ佐渡が見えると聞いたので・・」ここでoldboyくん少し身構える。
「安くするから乗っていかない」と言われるかもと。
「このタクシー飯田町のもので、どうせ帰り便やし、乗せてってあげるよ無料で、乗っていきなさい」とのお誘い。
ここから飯田町まで20キロ程度で、この街からも狼煙(のろし)行のバスもあるとのことである。
運転手さん、疑ったりして申し訳ない。
そもそもoldboyくんの風体を見て、こいつお金持ちの御仁だと思うやつなどどこにもいるはずがない。
こうもり傘に寝袋などを見れば貧乏旅行の極みであること一目瞭然のことであることに自分自身今気が付く。
むしろこんな御仁(oldboy君のこと)に近づかない事が一番の良作とするのが社会常識なのである。
「海岸からちょっと先のお寺がユースホステルを経営している」とのこと。


 ただならば話は別、いくら時間の余裕があっても行程の先に行くのが鉄則、ましてやすぐに夜になる、つい先ほど決心した楽しい野宿も中止、ただし「楽しい野宿」の事は運転手さんには言ってない。
いくらなんでも失礼であろう。

 タクシーは海岸から離れてやまの中に入る、20分程度で飯田町のユースホテルを経営するお寺さんに到着、道中、大学の事や、この旅の行き先などの話をしていたらあっと言う間の事。

 行き先は新潟まではハッキリしているが、佐渡に渡るか、上越線で沼田に行きそこから富士見峠にでて尾瀬ヶ原に行き日光
方面に出るかは未定である。
全て成り行きまかせの旅である。

 「それでは元気でな、いい旅になることを祈っているよ」と言い残しタクシーは去っていった。
走り去るタクシーを見ながら、ユックリ、深々とおじぎをするoldboy-elegyくんであった。

 「車に有料で乗せられる」と一瞬でも疑った事、「申し訳ありませんでした」

 このあと翌日にバスで緑剛崎灯台(通称・狼煙灯台)まで行き、東の海上を眺めたが、結局のところ佐渡は見えず。
ここで「見えぬなら、自分の足でそこへ行き、見てやろう」と、決心する。
新潟大地震の1年か2年あとのことである。
新潟港の船乗り場が随分沈下していたのと、港外に出ても暫らくは油臭く感じたのだが。

 大学の友人Kが是非泊まって行ってくれとの申し出、彼の母がたの実家が小松市から出ている軽便鉄道の終点、尾古屋鉱山と言うところにある。
ここでの泊まりがこの旅の初泊である。
俺K君のお母さんに会った事もないし、ましてやそのお兄さんの事、当然知る由もない。
懸命に固辞するも押し切られた格好で了承、少し気が重い。
非常な歓待を受け、ありがたいのはありがたいのだが、oldboyくんにとってはお尻が少々むず痒いものであり、翌日ようやく一人になって、解放された気分になった。

 すまんK君、いろいろ面倒をかけました。


 そして穴水のホステルのお母さん、気を遣わしてゴメンなさい。
満室状態で断られましたが、野宿のための玄関脇の樹木と芝生の使用、屋内のトイレや水道などいろいろ便宜を計っていただきました、それも申し訳なさそうに。

 2週間を超える旅になった。
結局、旅のだいごみって何なのだろう、景色や食事、勿論それもあろう、しかしそれ以上印象に残るものとは、「人!!!」これに尽きると思うがどうだろう。

 家にたどり着いたら飼い犬の「ホス」に吠えられる。

               了

             oldboy-elegy

 この貧乏旅行のあと学校に戻り、就職も決めた。 
人生最後のモラトリアム期間の4年間は、こうして過ぎていった。

 社会人1年生の頃のブログも記事化してある。
oldboy-elegyくんと言う極めて緩い(ゆるい)御仁ではあるが、この人、この21世紀の社会では座る席、占める場所などきっと無いのではと心配する。
まあブログと言う一種特別な世界からの視点であることを肝に銘じてみていこうと思う。
oldboyくんのように、お花畑を行くノー天気な人もマダマダこの世には多く存在しておられることを信じて。

 もしよろしかったら、下記関連リンク記事も目を通していただければ幸いである。
右下のイラスト画像が我が家の誇り高き雑種犬「ホス」に、旅行から帰ったおり、あやしがられ、吠えられた時の図である。
失礼な奴である。
基本このワン公、拾い主の妹が「ご主人」と思っている節がある。
時折、実家に顔を出すoldboy君は警戒対象の存在かもしれない。

 それでもたまに散歩に連れ出す時もある。
「しっかり俺の顔、憶えておけ!!!」


                  
             

 

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